水戸地方裁判所 平成6年(ワ)294号 判決
原告 茨城県信用保証協会
右代表者代表理事 猪狩三郎
右訴訟代理人弁護士 長野正紀
被告 齋藤茂春
右訴訟代理人弁護人 渡部公夫
主文
一 被告は、原告に対し、金六三二万九五七円及びこれに対する昭和五九年八月二一日から支払済みまで年一四・六パーセントの割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
理由
一 請求原因について
請求原因事実は、すべて当事者間に争いがない。
二 抗弁について
1 抗弁1の事実は、当事者間に争いがない。
2 同2及び3の各事実は、当裁判所に顕著である。
三 再抗弁について
再抗弁事実は、すべて当事者間に争いがない。
四 再々抗弁について
1 再々抗弁事実は、すべて当事者間に争いがないが、その法的効果について争いがあるので、これを検討する。
2 被告は、本件競売の手続が取り消されたのであるから、主たる債務である本件求償債務の時効中断の効力は生じない(民法一五四条)と主張する。
本件競売のような担保権の実行としての競売についても、差押えに準じて時効中断の効力が認められるから、同条は、担保権の実行としての競売についても適用されると解すべきであるが、同条が時効中断の効力を生じないとしている趣旨は、権利者自らの請求によって又は法律の規定に従わなかったことによって差押え等の処分が取り消されたときは、権利の実行行為の存在が否定されたと見るべきであるという点にあると解される。
ところで、本件競売の手続が取り消された理由は、単に剰余を生ずる見込みがないというに過ぎず、それにもかかわらず、差押債権者としては民事執行法六三条二項の申出及び保証の提供をしてまで競売手続を続行すべき義務はなく、むしろ、権利の実行行為の存在が否定されたとは見るべきでない場合であると言うことができる。
そうだとすれば、無剰余を理由として競売手続が取り消されたときは、同条の適用はないものと解するのが相当である。
3 したがって、時効中断の効力は生じないとする被告の再々抗弁は採用することができない。
五 結論
以上の事実によれば、本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 來本笑子)